2026.5.12
NY年収2500万円でも貧困
NYの子育て世帯、年収2500万円でも最低ライン…卵12個で950円
日本もイランショックで物価高騰、品不足が発生し生活困窮が叫ばれているが、米国は日本の比ではない。年収2500万円の世帯でもフードバンク(無料の食糧支援)を受けないと満足な食事が出来ないという。

マイホームを持ち、快適な老後を過ごすことは「アメリカンドリーム」の象徴だった。だが、今の米国では実現は容易ではない。

ニューヨーク市郊外のロングアイランドで暮らすサルバトル・バージェスさん(36)は、住宅ローンの試算画面を見つめて思わずため息を漏らした。

希望する4ベッドルームの一軒家を買えば、固定資産税や保険料を含む月々の支払いが6000ドル(約95万円)を超える。現在の家賃2700ドル(約43万円)の2倍を超える額だ。

「いつになれば買えるのか、正直見通せない」。10歳の長男と5歳の長女の成長に伴い、今の住まいは手狭になってきたが、広い家に移ろうとすれば、家計は一気に苦しくなる。条件に合う物件は100万ドル(約1億6000万円)前後ばかり。不動産価格は5年で約5割上昇した。
バージェスさんは病院で看護助手として働き、妻も医療機関で検査技師を務める。世帯年収は約14万ドル(約2200万円)。高収入に映るが、ニューヨークでは中間層だ。市が4月に発表した生活費に関する報告では、食費や家賃など子育て世帯が最低限必要なコストは年15万9000ドル(約2500万円)で、バージェスさんの世帯年収を上回る。
食費、教育費、保険料などを含めると、毎月の支出は7000ドル(約110万円)超。希望物件を買うには、最低でも数十万ドル規模の頭金が必要だ。「節約しても、生活するだけでお金が消えていく。この数年のインフレで生活費が倍増した感覚だ」
夫婦ともに通勤に使う車のガソリン代は月500ドル(約8万円)に上る。保険などを見直して支出を削ったが、食費や光熱費の値上がりが上回る。マイホームの夢は遠ざかるばかりだ。
住宅コストは中間層に重くのしかかる。米ペンシルベニア大のビンセント・レイナ教授は「住宅取得はかつて低所得層が直面する壁だったが、今や中間層にも広がった。多くの人が今の生活を維持するために所得の大部分を使っている」と指摘する。
トランプ大統領はインフレ抑制を成果と強調するが、各家庭の懐は厳しい。米労働省によると、米国の消費者物価指数はこの30年で2倍以上に上昇。特にコロナ禍後の5年ほどで生活に欠かせない支出が大きく膨らんだ。今年3月の牛ひき肉の全米平均価格は1ポンド(約450グラム)6・70ドル(約1100円)で、2021年比で5割超も上昇した。12個入りの卵もニューヨーク市内では6ドル(約950円)超で売られている。
食料品の値上がりは、生産現場の負担増を反映したものだ。ケンタッキー州でトウモロコシや小麦を栽培するジョン・ホルコムさんは春の作付け期の現在、繁忙期を迎えている。米イラン軍事衝突後、肥料価格は約3割上昇。軽油も1ガロン(約3・8リットル)5ドル(約800円)超に値上がりし、トラクターなどの燃料代だけでも負担が積み上がる。
「生産コストの大幅増は結局、食品価格に跳ね返る」。ホルコムさんは値上がりした肥料をどこまで使うか毎日のように計算する。減量は収穫に響くが、使えば利益を圧迫するからだ。
コスト増は医療にも及ぶ。「薬を買えるか心配だ」と頭を抱えるのは、サウスカロライナ州のデボラ・スラッシュさん(54)。糖尿病の持病があり、4年前から注射タイプの治療薬を使っている。他の薬も含め、毎月の薬代の自己負担額は1200ドル(約20万円)に上る。
24年に白内障やアキレスけん断裂の手術を受け、十分に働けず会社を解雇された。現在の収入は連邦政府による社会保障給付の月1200ドルだけ。生活費は、同居する退役軍人の姉(55)の障害補償に頼っている。
ただ、デボラさんは生活苦の原因が現政権の失政だけにあるとは考えていない。「インフレはトランプ政権のせいだとよく言われるが、社会全体の問題であり、民主党政権時代の失政が原因でもある」と話す。コスト増への不満は、政権批判だけでは割り切れない複雑な形で米国社会に広がっている。
一覧に戻る
日本もイランショックで物価高騰、品不足が発生し生活困窮が叫ばれているが、米国は日本の比ではない。年収2500万円の世帯でもフードバンク(無料の食糧支援)を受けないと満足な食事が出来ないという。

マイホームを持ち、快適な老後を過ごすことは「アメリカンドリーム」の象徴だった。だが、今の米国では実現は容易ではない。

ニューヨーク市郊外のロングアイランドで暮らすサルバトル・バージェスさん(36)は、住宅ローンの試算画面を見つめて思わずため息を漏らした。

希望する4ベッドルームの一軒家を買えば、固定資産税や保険料を含む月々の支払いが6000ドル(約95万円)を超える。現在の家賃2700ドル(約43万円)の2倍を超える額だ。

「いつになれば買えるのか、正直見通せない」。10歳の長男と5歳の長女の成長に伴い、今の住まいは手狭になってきたが、広い家に移ろうとすれば、家計は一気に苦しくなる。条件に合う物件は100万ドル(約1億6000万円)前後ばかり。不動産価格は5年で約5割上昇した。
バージェスさんは病院で看護助手として働き、妻も医療機関で検査技師を務める。世帯年収は約14万ドル(約2200万円)。高収入に映るが、ニューヨークでは中間層だ。市が4月に発表した生活費に関する報告では、食費や家賃など子育て世帯が最低限必要なコストは年15万9000ドル(約2500万円)で、バージェスさんの世帯年収を上回る。
食費、教育費、保険料などを含めると、毎月の支出は7000ドル(約110万円)超。希望物件を買うには、最低でも数十万ドル規模の頭金が必要だ。「節約しても、生活するだけでお金が消えていく。この数年のインフレで生活費が倍増した感覚だ」
夫婦ともに通勤に使う車のガソリン代は月500ドル(約8万円)に上る。保険などを見直して支出を削ったが、食費や光熱費の値上がりが上回る。マイホームの夢は遠ざかるばかりだ。
住宅コストは中間層に重くのしかかる。米ペンシルベニア大のビンセント・レイナ教授は「住宅取得はかつて低所得層が直面する壁だったが、今や中間層にも広がった。多くの人が今の生活を維持するために所得の大部分を使っている」と指摘する。
トランプ大統領はインフレ抑制を成果と強調するが、各家庭の懐は厳しい。米労働省によると、米国の消費者物価指数はこの30年で2倍以上に上昇。特にコロナ禍後の5年ほどで生活に欠かせない支出が大きく膨らんだ。今年3月の牛ひき肉の全米平均価格は1ポンド(約450グラム)6・70ドル(約1100円)で、2021年比で5割超も上昇した。12個入りの卵もニューヨーク市内では6ドル(約950円)超で売られている。
食料品の値上がりは、生産現場の負担増を反映したものだ。ケンタッキー州でトウモロコシや小麦を栽培するジョン・ホルコムさんは春の作付け期の現在、繁忙期を迎えている。米イラン軍事衝突後、肥料価格は約3割上昇。軽油も1ガロン(約3・8リットル)5ドル(約800円)超に値上がりし、トラクターなどの燃料代だけでも負担が積み上がる。
「生産コストの大幅増は結局、食品価格に跳ね返る」。ホルコムさんは値上がりした肥料をどこまで使うか毎日のように計算する。減量は収穫に響くが、使えば利益を圧迫するからだ。
コスト増は医療にも及ぶ。「薬を買えるか心配だ」と頭を抱えるのは、サウスカロライナ州のデボラ・スラッシュさん(54)。糖尿病の持病があり、4年前から注射タイプの治療薬を使っている。他の薬も含め、毎月の薬代の自己負担額は1200ドル(約20万円)に上る。
24年に白内障やアキレスけん断裂の手術を受け、十分に働けず会社を解雇された。現在の収入は連邦政府による社会保障給付の月1200ドルだけ。生活費は、同居する退役軍人の姉(55)の障害補償に頼っている。
ただ、デボラさんは生活苦の原因が現政権の失政だけにあるとは考えていない。「インフレはトランプ政権のせいだとよく言われるが、社会全体の問題であり、民主党政権時代の失政が原因でもある」と話す。コスト増への不満は、政権批判だけでは割り切れない複雑な形で米国社会に広がっている。

