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入浴が怖い

<事例>入浴が怖い...利用者から不安の訴え

Aさんはデイサービスでの入浴介助を受けています。最近、「入浴が楽しみで来ていたけど、怖いからデイサービスでお風呂に入りたくない」と言われ、入浴を渋るようになりました。



ご利用者の概要

Aさん 女性 78歳 要介護1 認知症なし 脳梗塞による軽い左片麻痺
小柄でやせている

入浴が好きだが、ひとり暮らしなので自宅でお風呂に入ることに不安を感じている。介助してくれるデイサービスでの入浴を楽しみにしていた。

事例の内容

Aさんはデイサービスでの入浴(個浴)介助を受けています。

その日も介護職員BさんがAさんの入浴介助を行ない、気持ち良さそうに湯船で温まっていました。と思ったのもつかの間、Aさんの身体が浴槽のなかで浮いてきてしまい、体勢が不安定になって顔がお湯につかりそうになりました。もともと小柄で体重が軽かったのですが、最近さらにやせたようです。
あわてて浴槽から出ようとするAさんを介助していましたが、左片麻痺があるためバランスを崩しそうになりました。

入浴後、Aさんから「この間は、洗い場の床で転びそうになって怖い思いをしたのよ。今日は浴槽のなかで身体が浮いてきて不安だったし、浴槽から出るときも怖かった。入浴を楽しみにしてきたけど、もうデイサービスでは入浴したくない」との訴えがありました。

どうしてこうなった?①

浴槽内での体勢の安定に注意が向けられていなかったのでは


利用者の体型によっては、浴槽内で浮力作用の影響を受けてしまい、お尻や足が浮き上がり、不安定な体勢になることを考慮していなかったのではないか?

確認するためのポイント①

Aさんのように小柄で体重が軽い方などは体型や筋力低下により、浴槽内での体勢が不安定になる場合があります。
浴槽の中で頭が後ろに傾くと、お尻が前にすべり、足が浮いて不安定な姿勢になり、溺れる事故も起こることがあります。
今までは大丈夫だった、と思うかもしれませんが利用者の状況は日々変化します。その日の体調なども含め十分に把握しましょう。

どうしてこうなった?②

片麻痺の人への介助方法が十分ではなかったのでは

脳梗塞による片麻痺があるため浴槽への出入りの際は、身体のバランスを崩しやすい。今回はあわてて浴槽から出ようとする利用者への対応が追いつかなかったのではないか?

確認するためのポイント②

片麻痺がある場合、浴槽の出入りの際、身体のバランスを崩しやすく、またぐ動作でふらつき転倒してしまう事故が起こりやすいと言われています。
特にAさんには下肢に軽度の麻痺があることをふまえ、転倒を予防する介助方法を行なう必要があります。
また、どのような方法で浴槽の出入りをするのかをご利用者に説明し、同意を得ておくことも大切です。

どうしてこうなった?③

転倒しそうになった経験からくる不安があったのでは

過去に浴室の洗い場で転倒しそうになった経験から、再度滑ってしまうことへの恐怖感があるのではないか?

確認するためのポイント③

浴室の床は濡れており、さらに身体を洗ったあとの石けんの泡が流し足りないとすべりやすくなります。安全な環境になっているでしょうか。
利用者の立ち上がり動作をスムーズに行なうための声かけや、利用者の身体機能に応じた介助方法が必要です。
また、立ち上がりの際の転倒のリスクを減らすために福祉用具を適切に利用することも考えましょう。

工夫点1

利用者に安心感を与える浴槽内での対応と声かけ


Aさんが安心して入浴できるために、浴槽内の体勢が安定しているか確認し、常に見守ることが必要です。足やお尻が浮いてしまえば、Aさんが不安になるのは当然です。

利用者の体が浮いた場合は、介護職員はあわてず落ちついて「大丈夫ですよ、私が腰を支えますので手すりを持って少し前かがみになっていただけますか」など声かけしながら、安定した体勢に戻す誘導をします。
湯量を少なくする等、不安を感じないように環境を適切に整えることも一つの方法です。

また、場合によっては、浴槽内に福祉用具の浴槽台を置き、その上に座ってもらい足元にすべり止めマットを敷くことで体勢は安定します。しかし、半身浴になるのでかけ湯をして上半身を温める介助も必要です。



工夫点2

安全に浴槽の出入りをするための介助方法と福祉用具の活用

介護者は麻痺側への転倒に注意し、麻痺側に立って身体を支えるようにします。
立った状態で浴槽の出入りをすることはバランスを崩して転倒する危険があり、座ったまま浴槽をまたぐ介助方法が安全です。

座ったまま浴槽をまたぐために福祉用具のシャワーチェア、バスボード、すべり止めマットを活用するといいでしょう。
シャワーチェアに座った状態からバスボードにゆっくり移乗する介助方法が転倒予防になります。介護職員が声かけすることにより次の動作を誘導することで利用者は不安がやわらぐと思われます。



工夫点3

洗い場での転倒を防ぐための環境整備と介助方法

洗い場でのシャワーチェアから立ち上がりや移動の際には、床や足底の石けんを十分に洗い流すことが重要です。シャワーチェアの足元にはすべり止めマットを敷き、すべらないよう予防します。

立ち上がりの介助はシャワーチェアの座面が利用者の足の長さにあわせて調整されているかを確認し、調整した脚が固定されているかの安全確認が必要です。福祉用具は繰り返し使用しているうちに劣化し事故につながることがあります。福祉用具の使用前には安全確認を欠かさず行ないましょう。

立ち上がりの動作はシャワーチェアに浅く座り直し、足を引いて前かがみの姿勢で立ち上がると、重心移動がスムーズにできて立ち上がりやすいです。介護職員は麻痺側に立ち、膝折れの心配がある場合は膝を手で支えるとよいでしょう。

これらの介助技術を介護職員全員が共有するために実技研修の実施が求められます。



 
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