2026.10.31
(雑学)JAXAが果たす地球防衛

プラネタリーディフェンス(地球防衛) - JAXA 宇宙科学研究所
フジテレビ「サバ缶、宇宙へ行く 」でも注目を集めているJAXAですが、地球防衛に大いに貢献しているのをご存じですか。
現在地球周辺で1万6千個の惑星が確認されています。
「小惑星が地球に接近!衝突の可能性あり?」
このようなニュースを最近よく耳にする方も多いのではないでしょうか。近ごろ小惑星に関するニュースが増えているのは、観測技術の発達でより小さな小惑星でも望遠鏡で見つけられるようになり、発見数が増えたからです。実は小惑星が地球に衝突するというのは、映画「アルマゲドン」のようなSFの世界に限らず、現実世界でも十分に起こりうる話です。

ツングースカ大爆発によってなぎ倒された森林
20世紀以降で一番大きな衝突は、1908年6月30日にロシアのツングースカ地方で起こりました。直径数十~100メートルほどの小惑星が飛来し、半径数十キロもの木々をなぎ倒すほどの大きな空中爆発が起こったのです。幸いなことに、落下地点周辺に人の居住区域はありませんでしたが、爆発の衝撃音は1000キロ先にまで響き渡り、多くの人々を恐怖へ陥れたといわれています。このような小惑星衝突に対する危機意識を多くの人に持ってほしい──その普及啓発のために、ツングースカ大爆発が起きた6月30日を「国際アステロイドデー」(小惑星の日)としようと国連が定めました。
小惑星衝突の危機から私たちの身を守る術を考えるには、まず、温故知新、小惑星衝突が地球環境に与えた過去の事例を知ることが重要です。2回に分けてこの問題を考えます。今回は、小惑星衝突が環境に与える影響について、最新の研究成果をもとに紹介していきます。
隕石は頻繁に地球に落下している?
危機意識を持とうと言われても、目の前で隕石落下を見た人はそうそういないはずで、イメージが湧きづらいものです。しかし、隕石は頻繁に地球に落下しているのです。
ここで言葉を整理しておきましょう。「小惑星」は太陽の周りを回っている天体のうち、惑星や準惑星(惑星よりも小さいけど球形を保てる天体)と認めるには小さく、さらに尾がないものを指します(尾があるものは「彗星」です)。その小惑星が大気圏で燃えて「流星」となり、そのうち燃えきらずに地表面まで落ちてきた残りものが「隕石」です。
地球全体で毎日100トンほどの物質が宇宙から飛来してきます。これほど多いのに被害の話をほとんど聞かないのは、地表に到達する前に燃え尽きるため、そして、地球全体で人の住む場所が限られ、地面に到達しても発見される可能性が低いためです。ちなみに地表まで届く隕石の推計は年間で数十個。決して少ないとはいえない数字ですね。現在発見されている地球の近くの小惑星はおよそ1万6000個で、いつか地球に衝突する可能性のある小惑星の数はそのうちおよそ1800個です。そのほとんどが、近年になってやっと観測でとらえられるようになった、小さな小惑星です。

JAXAプラネタリーディフェンス(地球防衛)は、地球に近づく小惑星などの天体を早期に発見し、軌道を精密に計算して地球への衝突の可能性を調べ、衝突の可能性がある場合には対応策を検討し実行する取り組みです。
重要なことは「充分前から備える」ことです。地球衝突までの時間があればあるほど、いろいろな対応の検討・実行ができます。また、一つの国で対応するのではなく、国際的に連携することが重要です。
主要ミッション
DESTINY+と RAMSES
2028年 H3 ロケットで相乗り打上げ、そして小惑星アポフィスを探査(予定)

DESTINY+(デスティニー・プラス)とRAMSES(ラムセス)は、2028年度にH3 ロケットで相乗り打上げされる予定です。JAXAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)の協力により、プラネタリーディフェンスにつながるデータを取得するために、アポフィスを探査します。
DESTINY+はアポフィスにすばやく接近して観測をしますし、RAMSES はアポフィスにとどまって詳しい観測をします。DESTINY+は、その後、このミッションで最も重要な天体である小惑星フェートンに向かいます。
世界中の研究者が大注目中!小惑星アポフィスとは?
アポフィスは、地球の近くを通る軌道をもつ小惑星です。2029年4月13日(金)に地球に非常に近いところ、最接近時は地上約3万2000kmまで近づきます(静止衛星の高度より低い)。ただし、地球に衝突する心配はありません。
大きさは約340mと推定されており、これほど大きな天体がここまで近づくのは観測史上初めてですので、世界中で観測や探査の準備が進められています。
このアポフィスの地球接近は、アポフィスのような小惑星が地球の強い重力によって軌道・自転・表面などがどのように変化するのかを確かめる千載一遇の機会になります。得られるデータは、天体の地球接近の予測やプラネタリーディフェンスの実行の仕方の検討につながります。
はやぶさ2♯
2026年7月に小惑星トリフネにフライバイ & 2031年には小惑星1998 KY26へ到着

小惑星探査機「はやぶさ2」は、ミッションを延長して拡張ミッション「はやぶさ2♯(シャープ)」を行っていますが、プラネタリーディフェンスにもつながる技術と知見を蓄積しています。
2026年7月には小惑星トリフネに対して秒速5kmですれすれのところを通過させる運用に挑戦します。これは、探査機を小惑星に体当たりさせるための技術獲得につながるのです。
2031年には直径約30m あるいはさらに小さい可能性がある小惑星1998 KY26を訪れ、「小さくて自転が速い」天体の性質を詳しく調べ、プラネタリーディフェンスの作戦向上に生かします。
Hera
2026年11月に小惑星ディディモス・ディモルフォスに到着

ESAのHera(ヘラ)は、NASA の探査機DART(ダート)が小惑星ディディモスの衛星であるディモルフォスに体当たりして起こした変化を現地で詳しく確認し、「体当たりがどれだけ効いたのか」を調べるミッションです。衝突でできたクレーターや放出物、小惑星の運動の変化などを調査し、将来、危険な小惑星の進路を変える必要が生じたときに、探査機を衝突させてその軌道をずらす方法がどのくらい有効なのかを検証します。
HeraにはJAXAも参加しており、熱赤外カメラTIRI(ティリ)を提供しました。TIRIで小惑星の表面温度の分布を測ることで、地面が砂状か岩状かといった性質を推定します。こうした情報を他の観測結果と合わせることで、体当たりの効果をより定量的に確かめることができます。
2024年10月に打ち上げられたHera は、小惑星ディディモス・ディモルフォスに2026年11月に到着予定です。

