staff blog

介護エピソード ここがいい



ここがいい。

「杖使ってまた歩きてぇんだ。」

ある日男性ご入居者様のNさんが私にこう言った。

ご入居された当時はまだ、ホーム内で杖を使って歩かれていたが、その後左半身が不自由になり、現在はほぼ車椅子の生活となっている。移動は、車椅子を右足で器用にこぎながらだ。 

「それでも杖の方がいいなぁ〜。」と、寂しげな笑頻で言われる。
「だって、杖使って歩けたら家で暮らせっぺ、なぁ?」




この日から、Nさんの希望に応えるべく取り組みが始まった。

普段からあまり体を動かされないNさん。
体重八十キロの巨漢である。
ご自分でも「ちっと、運動しねえとな。」と言われている。 

そんなNさんに、運動としてフロア内の手すりの掃除をお勧めした。
「おっ!あれなー、Iさんがやってたやつか?おれにも
できっか?」

そうは言われるものの、やり始めると右足でこぎ進めながら、ゆっくりではあるが、思いを叶えるべく雑巾を持つ右手で手すりを拭いていく。

そんな姿に、「Nさん、ありがとうございます。」と感謝の言葉をお伝えしながら、深々と頭を下げる。

すると、「やめろ、やめろ、大した事やってねえんだ。自分のためだ。そんなに頭下げんな、安くねえんだから。」と、照れながら手を振られる。 

そのNさんは神経痛があり、雨や寒い日などは頭の痛みや腰の痛みで、手すり拭きができなくなってしまう。

そんな時は、「無理しないで。」

「今度調子のいいときに。」と伝えると、

「明日はやるからな。せっかく言ってくれたんだ。」と

申し訳なさそうに言われる。 

また、煙草が好きなNさんは、食後に一本やるのが楽しみである。
「これをやれば、家さ行げんな!」と笑顔で言われる。
そうして、手すり拭きに加え、喫煙時の歩行訓練も行うようになった。

「もうやめた。だってよ、少ししか歩けねえしよ。無理だ。家さ行げねえ。」

ある日突然Nさんが寂しそうな顔で言い出した。 

「Nさん。私は、Nさんが決めたならそれでいいです。ただ、「家で暮らせっぺ!」と言ったときのNさんの言菜も忘れられないんです。

Nさんが頑張っている姿には、私も励まされたんです。まだまだ時間はかかるでしょうが、騙されたと思ってもう一度やってみませんか?」 

そっぽを向いていたNさんは、そのままの姿勢で、
「騙されたと思ってやってみるっぺ。」と思いを込めた返事を返してくれた。 

運動はいまだに続いている。
いまだに車椅子生活を送られている。

そんな状況でもNさんは私にこんなひと言をくれた。 

「俺、もう家に行かなくていいから。いやいやそうじゃなくて、やることが嫌になったんじゃなくて、ただここが良くなったんだ。心配してくれるあんたがいるここがいいんだ。これからも頼むわ。いいばい?」

「喜んで。」
それ以上言葉が出なかった。
一覧に戻る

contact

施設の事、料金について、入居のご相談などはお問合せフォーム・お電話にてお気軽にご相談下さい。

お電話でのお問い合わせ

受付時間 9:00~18:00 (土日祝定休)

フォームからのお問い合わせ

お問い合わせ