2026.11.9
よくわかる介護の話

高齢者の脱水予防とは?
脱水のサインや水分を飲まないときの対策を解説

高齢者は、加齢によって体内の水分量が減少することや、喉の渇きを感じにくくなることから、若い世代に比べて脱水を起こしやすい傾向があります。特に気温の高い夏場は脱水のリスクが高まるため、日頃からこまめな水分補給を心がけることが大切です。
脱水が進行すると、めまいや立ちくらみだけでなく、意識障害や熱中症などにつながるおそれもあります。この記事では、高齢者が脱水しやすい理由や見逃したくない脱水のサイン、効果的な予防方法のほか、水分を飲んでもらえない場合の工夫についてわかりやすく解説します。
高齢者はなぜ脱水しやすい?

高齢者は、加齢による身体機能の変化や生活習慣などから、若い世代よりも脱水になりやすい傾向があります。
加齢によって喉の渇きを感じにくくなる
体内の水分が不足すると、通常は喉の渇きを感じます。しかし、加齢によってこの感覚が鈍くなると、体が水分を欲していても「水を飲みたい」と感じづらくなります。そのため、高齢者のなかには「自分は大丈夫」だと感じ、脱水を他人事としてとらえる人もいます。本人の感覚だけに頼らず、周囲の人は意識して水分摂取を促すことが必要です。
体内の水分量が少なく、水分調整機能も低下する
実は、筋肉にも多くの水分が含まれています。しかし加齢とともに筋肉量が減ると体内に蓄えられる水分量も少なくなります。さらに、腎機能の低下によって、体内の水分や塩分を調整する力も弱くなります。そのため、発熱や下痢、発汗などで水分が失われると、脱水を起こしやすくなります。
生活習慣や服薬の影響を受けやすい
トイレの回数を増やしたくないために水分を控えたり、食欲の低下で食事から摂る水分が減ったりすることもあります。また、利尿薬などの服用によって水分が失われやすくなる場合もあります。
高齢者の脱水サイン

脱水は、重症化する前に気づくことが重要です。本人が体調の変化を伝えにくい場合は、家族が普段の様子を注意深く観察します。
脱水の初期に現れやすいサインと行動の変化
脱水は、重症化する前に気づくことが重要です。本人が体調の変化を伝えにくい場合は、家族も普段の様子を確認しておきましょう。
口や唇が乾く
尿量が減り、色が濃くなる
食欲が落ちる
元気がなくなる
ぼんやりして反応が鈍くなる
いずれも脱水以外の原因で起こることがありますが、気温が高い、エアコンを使っていないなど、脱水を起こしやすい環境にいる場合には違和感に気づく手がかりになります。
受診を検討したい危険な症状
強いめまいがある、自力で立てない、意識がもうろうとしている、水分を飲めないといった症状が出ている場合は、脱水が進んでいる可能性があります。早めに医療機関へ相談しましょう。
隠れ脱水セルフチェック
脱水症状がはっきり現れる前の状態を、一般に隠れ脱水と呼ぶことがあります。脱水しているかを確かめる簡易的な方法があります。手の甲の皮膚を軽くつまみ、離してから元に戻るまでの時間を確かめてください。3秒以上戻らない場合は、ハンカチーフサインと呼ばれ、脱水の可能性があります。
また、親指の爪を押して白くしたあと、指を離して2秒以内に赤みが戻るかを確認する方法もあります。戻るまでに時間がかかる場合は、脱水や血流低下の可能性があるため注意が必要です。ただし、いずれも脱水の可能性を確認するための目安であり、これだけで脱水と判断できません。加齢による皮膚の変化でも同様の状態になることがあるため、尿量や口の乾き、食欲、反応の変化なども合わせて確認しましょう。
高齢者の脱水予防で大切な基本対策

脱水予防では、喉が渇く前に少量ずつ水分を摂り、無理なく続けられる習慣を作ることが大切です。
水分補給のタイミングを決める
起床後、食事中、入浴前後、就寝前など、飲むタイミングを決めておくと水分補給を忘れにくくなります。薬を飲む時間やおやつの時間と組み合わせる方法もあります。
室温と湿度を管理する
脱水は室内でも起こります。高齢者のなかには、暑さを感じづらくなることで室温が高くても暑くない、エアコンはいらないと話す方もいます。夏は温度計や湿度計を使って室内環境を確認し、エアコンを使いましょう。
エアコンの購入や設置が経済的な負担になる場合、一部の自治体では、一定の条件を満たす世帯を対象に費用を助成しています。対象者や助成額、申請期間は自治体によって異なり、購入前の申請が必要な場合もあります。利用を検討する際は、お住まいの自治体の公式サイトや高齢者福祉の担当窓口で確認しましょう。
必要な水分量を意識し、食事からも補給する
食事と飲み物から摂る水分は、1日約2リットルがひとつの目安です。このうち、食事から約1リットル、飲み物から約1リットルを摂ることが推奨されています。ただし、必要量は体格や活動量、発汗量、持病によって異なります。心臓病や腎臓病などで水分制限を受けている方は、医師の指示を優先してください。
みそ汁やスープ、果物、ゼリーなども水分補給に役立ちます。コーヒーや緑茶も水分にはなりますが、カフェインを含むので摂りすぎには気を付けます。
高齢者が水分を飲んでくれないときの対策

水分を勧めても飲んでくれない場合は、無理に飲ませず、飲みたくない理由を確かめ、本人の気持ちに配慮しながら工夫することが大切です。
水分を嫌がる理由を確認する
水分を摂らない背景には、トイレの回数を増やしたくない、飲み込む力が低下している、水やお茶の味が好みではないといった理由があります。
むせやすい、飲み込みに時間がかかるなどの変化がある場合は、かかりつけ医や訪問看護師などへ相談しましょう。介護サービスを利用している場合は、担当の介護職やケアマネジャーに様子を伝え、必要な専門職につないでもらう方法もあります。
飲みやすい形や温度を工夫する
冷たい麦茶、常温の水、白湯、スープなど、本人が好む飲み物を試してみましょう。果物やゼリー、ヨーグルトなどから水分を補う方法もあります。一度に多く飲んでもらおうとせず、少量ずつ何度か勧めることもポイントです。
脱水が疑われる場合は経口補水液も検討する
発熱や下痢、大量の発汗などで脱水が疑われる場合は、経口補水液が役立つことがあります。
いずれにせよ、水分を受け付けない、症状が改善しない、意識がもうろうとしているといった場合は、早めに医療機関へ相談してください。持病がある方は、使用前に医師や薬剤師へ確認すると安心です。
高齢者の脱水予防は家族の見守りが大切

高齢者は喉の渇きに気づきにくいため、家族や周囲の人による見守りが予防につながります。
毎日の変化を確認する
食事や水分の摂取量、尿の回数や色、表情、会話への反応などを確認しましょう。急な食欲低下やふらつき、反応の鈍さがある場合は、脱水だけでなく、熱中症や感染症、持病の悪化も考えられます。
家族だけで抱え込まず介護サービスも活用する
家族だけでの見守りが難しい場合は、訪問介護やデイサービス、訪問看護なども活用しましょう。利用できるサービスについては、地域包括支援センターに相談できます。
まとめ
高齢者は喉の渇きを感じにくく、体内に蓄えられる水分量も少ないため、脱水への注意が必要です。飲むタイミングを決め、食事からも水分を補いましょう。
水分を嫌がる場合は、好みや飲み込みやすさに合わせて工夫することが大切です。普段と違う様子が見られたときは、早めに医療機関へ相談してください。

